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南郷アートプロジェクト2015|南郷Re-collection

barスマモリ★マスター対談

『barスマモリ』は、島守出身・在住の方をはじめ、島守や山本さんちを取りまく人々が月替わりでマスターを務める1日限定バー。マスターを務めていただいた方には、感想や、地域への思いを語っていただく「マスター対談」を行っています。11月のマスターは、Facebookを通じてbarスマモリに参加し初めて約半年、今では常連の1人になった伊藤一樹さんです。昨年冬にUターンした新人農家でもある伊藤さん。若手農業者の現状と本音がここに。

葉たばこ農家の1年

山本:
いとぅー(伊藤さんのニックネーム)って、なんで帰ってきたんだっけ?
伊藤:
んー。プラーッと、っすね。特にそんな大きな理由はなかったですけど。
馬場:
我々30代が都会に出る、八戸に戻るっていう時には、わりとはっきり“都会への憧れと挫折”があったと思うんですよね。好きで出ていったものの、20代後半になって疲れてきたり、都会で見てた夢が叶いそうにないからとか、親が帰って来いと言うから…というパターン。そういうことでもなく?
伊藤:
なく。ほんとにプラッとっすねぇ。
馬場:
それはまた、気負わないというか。今はご実家で農業やってらっしゃるんですよね。
伊藤:
たばこ農家です。南郷はたばこ、有名っすからね。青年部みたいなのがあるんで、けっこう若い人いますよ。組合の祭りでは高校の先輩とか、同世代の人たちに会いました。
馬場:
1年お仕事をしてみて、いかがでしたか?
伊藤:
大変ですよー。冬のうちにハウスで苗を育てて、4月、雪溶けしたら畑に植えつけ。収穫は夏、7月頃。その後は乾燥を、11月ぐらいまでかな。地区ごとに出荷時期も違うんですよ。自分のところは(12月)1日に全部売れたんで、出荷が終わったとこです。お金が入るのは12月下旬。
山本:
JTに出荷するんだよね。冬は何やってるの?お金入ってくるし、ちょっと休んで、みたいな感じ?
伊藤:
隣の家のおばあちゃんが、よく仕事を勝手に、勝手にですよ?決めてくるんです。来月、盛岡に出稼ぎに行くんですけど、それもおばあちゃんが勝手に決めてきたんです。冬の間、ボイラー関係の仕事みたいですけど。坂本さんと一緒に。
山本:
2014年6月の回でマスターをやってくれた坂本くんね。頼れるアニキと一緒、いいじゃない。それにしても、いいマネージャーついてるね~。おばあちゃん、いとぅーのことほっとけないんだね。
馬場:
このチラシ、これ『何を企んでいるのか?』ってありますけど、いとぅーさんが何かを企んでいるというより、周囲がいとぅーさんを使って企みたくなる、そんなキャラクターなんですかね。
伊藤:
今年、是川の友だちのところに稲刈りの手伝いに行ったら、友達のお父さんから「やってみないか?」って。来年は友だちと2人でコメのほうにも手を出そうかなと思ってます。
高橋:
引く手あまたですね!
山本:
いい働きするんだと思うんですよ。想像ですけど(笑)。
馬場:
農家の方ってけっこうシビアですもんね。手んど(仕事の要領)が悪い人だと、手伝ったとしてもそういう話は出ないかも。
伊藤:
オレは全然、手伝ってくれるだけでありがたいですけどね。たばこを手伝いにきてくれる人とか、初めてだと要領を掴めなかったりするけど、来てくれただけで感謝。いてくれるだけでいいんですよ。
山本:
いい奴じゃん…。もう、帰れ(笑)!
高橋:
たばこって、素人でも手伝えることあるんですか?資格がなくても収穫できます?
伊藤:
できますよ!資格なんていらないし。でも、収穫の時期って素人にはわかんないんですよ。オレにもわかんないです、できた葉っぱなのかどうかは。色で判断するみたいですね。だから親が全部採って、オレは編む方。できあがってないたばこを取って乾燥させても売り物にならないですから。
山本:
美しいよね、あれは。
馬場:
なるほど。縄に葉たばこの茎の部分を編み込んでいって吊り下げるわけですね。この時点でにおいは?
伊藤:
においはないですよ。でも手がべとべとになっちゃいます。手袋はめて作業すると、手袋が真っ黒。真夏はどんなに暑くても、極力、半袖は着ないようにするんですよ。ベタベタになるんで。

暑いときに収穫するし、栽培のサイクルが始まっちゃったらもう休めない。大変で、それでこれか、みたいな金額で。今年は若干、値段上がったみたいですけど。この辺ではどこの家でもそれなりの量がとれて、まぁまぁ良かったかな、みたいな感じ…らしいです。暑かったから。
高橋:
暑いといいんですね。
伊藤:
暑いといいんです。乾燥させるのにも、天気が悪いとカビが生えちゃう。今年はお盆過ぎてからけっこう雨続きだったんで、参りましたよ。
山本:
カビはどうするの?
伊藤:
アルコールで拭き取ります。収穫の後、編んでハウスの中に吊るしますよね。そして茶色くなってきたら小屋に移して寝かせて、圧搾機にかけて水分が戻らないようにします。それをまたほぐして、カビがあるところは歯ブラシみたいな道具で拭き取るんです。カビがちょっとでもついてたら売れません。梱包して出すんですけど、カビが上にちょっとあると1梱包すべて返品。
馬場:
アウトレット品として売るってことはできないんですか?
伊藤:
ちょっとのカビなら「拭き取って持ってきなさい」ってなりますけど、ダメならそのまま廃棄じゃないですかね。口つけるものだから、その辺は厳しいです。各農家をトラックが回ってきて、地区のみんなの分を一緒にして運ぶんですけど、たとえば梱包を開けた時、虫がチョロッといたら、そのトラック1台分がダメ。地区のみんなが出荷できない。
山本・高橋・馬場:
えーっ!?
伊藤:
カビとか異物が入ってる状態が何年か続くと、「たばこ栽培をやめてください」ってなっちゃうし。ご近所さんとの関係も大事です。

南郷の星になれ、いとぅー!

山本:
じゃあコメのほうがいいのかな?水の管理をしっかりしてれば、比較的手はかからないって8月のマスターの惇夫さんは言ってたね。いとぅー的作りたいもの第1位は?
伊藤:
コメですね。次はやっぱり、たばこかなぁ。それなりにお金になるんで。この手間でこの金額?とは思いますけど、最低限の買い取り金額っていうのは保証されてるんで、金銭的には安定すると思います。とはいっても、あと5年でやめるかな。
山本・高橋・馬場:
えっ!?
伊藤:
5年くらいかけてコメにシフトしていくつもりです。オレの中の計画では。
山本:
でも農業は続けるってことだから、すごいいいよね。
馬場:
南郷は今、「八戸ワイン産業創出プロジェクト」の中心地ですから、ワイン用ブドウの栽培って手もありますよ。
伊藤:
だってあれ、収穫までに7年から10年くらいかかるとか聞きましたよ。ある程度補助はあるんでしょうけど…。
馬場:
じゃあ、県南で最初の「青天の霹靂」栽培農家になるとか?
伊藤:
気候的に難しそうですよね。大変そうだな…。楽したいからな…(笑)。
高橋:
農業で楽なんてできないじゃないですか?
伊藤:
いや、楽じゃないですか?自由だもん。心も時間も。宇都宮に7年いて、いろいろ仕事してたときも楽しかったけど、今は自由だなぁ。
馬場:
そうですよね。5カ年計画でコメ栽培にシフトする計画を立てたりして、楽しんでる感じが。
伊藤:
変わるかもしんないですけどね、気分屋だから。
山本:
変わってもいいんじゃない?何やってもいいよ、犯罪以外なら(笑)。だって見てたら分かるけど、どこでも生きていける人じゃん。いとぅー。強いもん、大丈夫。良い意味で島守っぽくないし、広い視点があるように感じるんだな、僕は。勝手にだけど。誰と対応してても差がないっていうか。
 
(ここで伊藤さんの携帯電話が鳴る)
伊藤:
今日、忘年会で。ていっても、僕は送迎係で。近所のおじさんを乗せてかなきゃなんないんです。
山本:
親とかじゃないのに送迎ってのがまた。声かけやすいんでしょうね。人気者だなぁ。
伊藤:
こき使われてるだけっすよ。みんなたばこやってるから、すぐ「来い来い」「やれやれ」って。ま、相手は選びますけどね。
山本:
ま、マネージャーが勝手に決めてくる仕事断れない男ですけどね(笑)。こんな若い子が帰ってきて農業やってることに感動してますよ。今27歳でしょ?27って、僕は遊んでたもん。農業なんて絶対やりたくないって思ってた。だから、えらいなって最初に思って。で、ちゃんとやる奴だし。信用できるから。村の星だって思ってます。大好きなんですよ、僕。
伊藤:
そんなちゃんとした人間じゃないんですって…。
山本:
やる時はやる人だから、信用できて、だからみんな近づいてくるんだよ。かわいがられるし。マスターやった時もさ、「僕テキトーにやりますよ」なんて言って、スタート2時間前にちゃーんと宇都宮餃子を持ってくる男ですよ。冷凍餃子120個、友だちから送ってもらって。しかも自分ちの新米と物々交換でゲットしたやつね。餃子うまかったね。
伊藤:
僕、食べてないんでわかんないっす…。
山本:
食べるっていうか、料理もまったくしてないしね(笑)。最初ちょっと切ったりはしてたんだけど、だんだんほかのメンバーがやり始めて。いとぅーがギョーザと鍋を用意してくれてたんだけど、始まる前にお隣の惇夫さんが白菜とキャベツと大根をくれたから、それを誰かが料理し始めたんだよね。
伊藤:
その辺覚えてないんだよなぁ…。
高橋:
覚えてないんですか!?こんなポーズしてたのに?
高橋:
なんかね、「いとぅー」がよかったんだと思う。それまで伊藤さんって呼んでたのが、「いとぅー」って呼んだ瞬間にグッと近くなった。
馬場:
「いとぅー」の生みの親っていうのは?
山本:
僕です。伊藤さんとか斎藤さんとか見ると全部「とぅー」にしたくなるという、それだけのことなんですけど(笑)。
高橋:
すごい陽気なマスターでしたよね。それで、みんな「飲むベー!」みたいに盛り上がって、楽しい会でした。こんなにマスターが何にも覚えてないっていうのは初めてですが(笑)。あの日はすごい「いとぅー」感出てましたよね。今はちょっと『伊藤さん』な感じですけど。
山本:
ただ単にシャイなわけじゃなくて、酒飲めば盛り上げてくれる。貴重じゃないですか。引っ張っていってもらわないとね。南郷を、南郷の若者たちを。またマスターをやりたいと思いますか?ていうか、やれるよな?
伊藤:
もう、全然やれますよ!とりあえず、おじちゃんを送ってきてからね!

11月のマスタープロフィール

伊藤 一樹
伊藤 一樹いとうかずき

1988年4月16日生まれ。南郷不習(ならわず)地区出身。名久井農業高校卒業後、栃木県宇都宮市で営業・販売・接客・運転などさまざまな仕事を経験。2015年2月に帰郷し、家業の葉たばこ栽培を手伝い始めた新人農家。ビール派。

青天の霹靂

2015年秋に誕生した、青森県のブランド米。
http://seitennohekireki.jp/